遺言書の効力と執行

遺言書の効力

遺言書は、法律上のルールに従って作成されていれば、法的な効力を持ちます。
効力によって実現できる内容も法律によって定められており、全部で10種類以上あります。

遺言書の効力によって実現できること

  • 相続人と相続割合の指定
  • 特定の相続人の廃除
  • 遺産の分割方法の指定
  • 後見人の指定
  • 子どもの認知
  • 遺言執行者の指定 など

遺言書の効力では実現できないこと

  • 養子縁組・離婚・結婚に関する指定
  • 臓器提供などの指定
  • 葬儀方法の指定
  • 残された家族への指示・要望 など

なお、遺言書の効力は遺言書を残した方が亡くなった時点から発生し、有効期限はありません。
ただし、遺言書を新しく作り直したような場合は、あとに作った遺言書の内容が優先されます。

遺言書が効力を失うケースもある

遺言書の効力は以下のような場合には失われてしまうため、作成する際は十分注意しなければなりません。

  • 書き方のルールが守られていない
  • 遺言能力がない被相続人により作成された
  • 資格のない証人に依頼した(公正証書遺言の場合)

なお、「自筆証書遺言の封を勝手に開けた」といったケースは、一見効力に影響を及ぼすように思えますが、特に効力に失うことはありません。

遺言書の執行

遺言書の執行とは、遺言書の内容を実現するために各種手続を行うことを指します。
執行を行う人を「遺言執行者」と呼び、相続人のなかから選ばれることもあれば、弁護士などの専門家に依頼する場合もあります。

遺言執行の基本的な流れ

遺言書の執行は、基本的に以下の流れで行われます。

遺言書の検認手続

遺言書にはいくつか種類があり、そのうち被相続人の手書きで作成された「自筆証書遺言」の場合は、原則として最初に「検認手続」を行わなければいけません。
検認手続とは、遺言書の形状や開封時点の内容を裁判所に確認してもらう手続です。ただし、内容の有効性については確認しないため、のちのち無効になることもあり得ます。

一方、「公正証書遺言」は検認の必要がありません。公正証書遺言は、公証人によって正式な方法で作成されているため、確認の必要がないためです。

遺言執行者就任通知書の送付

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理や遺言執行の手続を行う人のことです。
遺言執行者は、遺言執行者に就任したことを相続人全員に通知します。また、遺言書の内容も相続人全員に通知する義務があります。
これは、相続人への通知を行わないまま手続を進めてしまうことによる、遺言執行者と相続人の間でのトラブルを防ぐためです。

多くの場合、遺言者が遺言のなかで執行者を指定しますが、承諾するかどうかは自分で決めることができます。
また、遺言執行者が選任されていなかったり、指定された遺言執行者がすでに亡くなっていたりする場合は、家庭裁判所で遺言執行者選任の申立てをしてもらうことも可能です。

財産目録の作成・送付

財産目録とは、相続財産の種類やどれくらいあるかを整理した書類です。遺言執行者は、財産目録を作成し、相続人全員に交付する義務もあります。
なお、財産目録に記載する財産は遺言書に記載されているもののみです。

遺言執行

相続財産の分配や名義の変更など、遺言の内容を実行するための手続を行います。すべての手続を実行したら、遺言書の執行者は報告書を作成し、相続人全員へ送付します。

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