遺産を分配したあとにすべきことは?
遺産を誰がどれだけ相続するか決まったら、次は以下のような手続を行います。
- 名義の変更
- 相続税の申告
- 相続登記
上記の手続を行わない限り、遺産を正式に相続したことにはならないので、預貯金を引き出したり、不要な不動産を売却したりすることができません。
なかには期限が定められている手続もあるため、できるだけ早く行う必要があります。
①名義の変更
被相続人の名義になっている財産や支払いを、各相続人の名義に変更する手続です。
名義変更をすべきものとしては、主に以下のようなものが挙げられます。
- 預貯金(口座)
- 自動車、バイク
- 有価証券(株式・投資信託など)
名義変更のやり方
名義変更の手続は、基本的に各手続先へ申請して、求められる書類を提出すれば完了します。
手続先は遺産ごとに異なり、たとえば預貯金なら各金融機関、不動産は法務局、自動車は運輸支局、株式なら各証券会社などです。
申請に必要な書類も手続先によって異なりますが、以下は基本的に提出を求められます。
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
【注意点】
- 自筆証書遺言もしくは秘密証書遺言の場合、裁判所が発行した検認調書の準備も必要になります。
- 遺産分割協議書には、各相続人の押印が必須です(添付する印鑑証明書と同じ印鑑での押印)。
- 被相続人名義の口座は、銀行側が死亡の事実を知った段階で凍結されます。すると、その口座から引き落とされている支払い(家賃や公共料金など)は止まってしまいます。
②相続税申告
相続税申告とは、遺産を取得した人が行う税金の申告手続のことです。
相続・遺贈によって財産を受け取る際に税金が発生するため、必要に応じて申告手続をしなければなりません。
相続税申告の流れ
相続税申告の流れは以下のとおりです。
- 分配された遺産について相続税を計算
- 相続税申告が必要か確認
- 申告書の作成・添付書類の収集
- 税務署へ申告書提出
- 相続税申告の完了
ただし、①の相続税の計算は非常に複雑です。間違った金額を税務署に申告しないためにも、必要に応じて税理士や弁護士などへの依頼を検討すべきでしょう。
【注意点】
- 相続開始(亡くなった事実)を知った日の翌日から10ヵ月以内に申告しないと、延滞税などのペナルティが発生します。
- 基礎控除や税額控除制度(配偶者控除など)の適用により、申告や納税が不要なケースもあります。
また相続税申告とは少し異なりますが、場合によっては「準確定申告」が必要になることもあります。
準確定申告とは、被相続人の生前の所得を税務署に申告する手続です。その年の1月1日から亡くなる日までの所得を、相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内に申告しなければなりません。
③相続登記
相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続のことです。
具体的には、法務局へ申請をして、登記簿(土地や建物の状況や権利関係を記録したもの)の名義を変更してもらうことになります。
相続登記の流れ
相続登記の手続は、主に以下の流れで行います。
- 必要書類(戸籍謄本、住民票等)の収集
- 相続登記申請書の作成
- 管轄の法務局への申請
- 補正や訂正指示等への対応(法務局から指示がある場合)
- 相続登記の完了
【注意点】
- 不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に完了しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、相続登記が義務化された2024年4月1日よりも前に発生していた相続についても適用されます。 - 手続せずに放置していると、不動産の権利関係が複雑になったり、債権者に差し押さえられたりするリスクがあります。
- その他の基礎知識
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- 相続財産と分け方
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- 相続の対象となる財産
- 財産の分け方
- 分配後の手続
- よくあるトラブルと対処法