成年後見人は解任や変更ができる!辞めさせられる3つのケースとは?

結論からいえば、成年後見人の解任や変更は可能です。ただし、簡単には認められません。
なぜなら、成年後見人の解任については法律によって定められているからです(民法第 846 条)。
このページでは、成年後見人を解任できるケースや手続方法、解任できないときの対処法などについて詳しく解説しています。
「後見人を辞めさせたい」と考えている人はもちろん、これから成年後見制度を利用する人にとっても参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
- この記事でわかること
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- 成年後見人を解任できるケース
- 成年後見人を解任する場合の手続方法
- 成年後見人を解任できないときの対処法
- 目次
成年後見人を解任・変更することはできる
成年後見人を解任したり、変更したりすることは可能です。
ただし、「成年後見人と話が合わない」、「自分や家族の思いどおりにしてくれない」といったような理由での解任・変更は難しいでしょう。
成年後見制度は法律によって定められているものであり、実際に誰が後見人となるかは裁判所の判断で決定します。
同様に、解任についても法律が定めていますし、解任の決定も裁判所が行いますので、先ほど挙げたような個人的な理由では基本的に認められないのです。
実際にどんな場合なら成年後見人を解任できるのかについては、のちほどご説明いたします。
成年後見制度自体をやめることはできない
なお、成年後見人を解任できたとしても、制度自体をやめることはできません。
成年後見制度が終了するのは、基本的に以下の場合に限られるからです。
- 被後見人が亡くなったとき
- 被後見人の判断能力が改善したとき(医師による判断が必要)
詳しくはのちほどご説明しますが、成年後見人が解任されたあとは、裁判所によって別の成年後見人が選ばれて、制度は継続されることになります。
任意後見制度なら解任に併せて制度の利用をやめられる
ただし、「任意後見」という種類の制度を利用している場合は、後見人の解任とともに制度の利用も終了します。
任意後見とは、簡単にご説明すると、後見人となる人と契約(任意後見契約)を結んで、判断能力の低下に伴って後見業務を行ってもらうという制度です。
この任意後見契約はあくまでもその後見人との間で個人的に結ばれたものなので、新たに別の誰かと契約を結び直す決まりなどはなく、その後は任意後見を利用しないこともできるのです。
とはいえ、任意後見が必要な状態(判断能力が低下している状態)が改善されるケースは稀ですから、実際は別の後見人を探して制度を継続することが多いでしょう。
任意後見については以下のページで詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
成年後見人を解任できるのはどんなとき?
成年後見人を解任できるのは、以下の場合に限られます。
- 成年後見人に不正行為の事実がある
- 成年後見人に著しい不行跡がある
- 成年後見人に後見の任務に適しない事由がある
上記は民法第 846 条によって定められた内容であり、これ以外の理由で成年後見人を解任することはできません。
また、任意後見についても「任意後見契約に関する法律」の第8条によって同様に定められています。
それぞれ以下で見ていきましょう。
不正行為の事実がある
成年後見人が、後見業務において不正行為を行っている場合は、解任を請求することができます。
代表的なのは、成年後見人が被後見人の財産を使い込んでいたり、自分の口座に振り込んでいたりするケースです。
ほかにも、自分がローンを組むために被後見人名義の不動産を勝手に担保に入れていたような場合も、この不正行為に該当するといえるでしょう。
著しい不行跡がある
不行跡とは、簡単にいえば、普段の行いや振る舞いに問題があるということです。
そもそも成年後見人には、被後見人の財産管理や身上監護(※)といった後見業務を行う責任があります。
しかし、生活の乱れなどが原因で、後見業務を行うのに支障が出たり、被後見人の財産を減らすおそれがあったりする場合は、解任できる可能性があります。
- ※ 被後見人の生活、治療、療養、介護などに関する法律行為を行うこと。たとえば、入院手続や介護サービスの契約手続などを本人の代わりに行う。
後見の任務に適しない事由がある
「後見の任務に適しない事由がある」とは、たとえば、介護施設への入居手続をおろそかにしたことで、介護サービスが受けられず、被後見人の生活に支障が出たような場合が該当します。
ほかにも、裁判所への定期的な報告を行っていなかったり、被後見人に対して虐待を行っていたりするような場合も同様です。
また、後見人自身に落ち度がなくても、大病を患って入院することになる、遠方へ引っ越すことになるなど、やむを得ず業務を継続できないような場合も解任理由となるでしょう(もっとも、これらの事情がある場合には、まずは後見人自身に自発的に辞任するよう促すことになるものと思われます。)。
成年後見人の解任手続はどうやって行う?
成年後見人の解任には裁判所の判断が必要になりますので、所定の手続を行わなければなりません。
以下で詳しく見ていきましょう。
- ※ 任意後見の場合は、任意後見契約を解除することで、同時に後見人の解任も行われることになるため、以下では成年後見(法定後見)の場合について説明します。ただし、任意後見契約の解除によらずに解任する場合などは、裁判所への申立てが必要です。
成年後見人を解任する流れ
成年後見人を解任する場合、基本的には以下のような流れになります。
- 解任理由に該当する証拠の収集
- 解任申立書の作成
- 成年後見人の解任の審判の申立て
- 申立て受理後、裁判所による事実関係の調査
- 解任の審判
- 新しい後見人の選任
成年後見人の解任を申し立てることができる人は?
成年後見人の解任を申し立てることができる人は、法律によって以下のように定められています(民法第846条)。
- 被後見人
- 被後見人の親族
- 成年後見監督人
- 検察官
なお、成年後見監督人とは、後見人が適切に後見業務を行っているか確認する役割を持った人で、裁判所の判断によって選任される場合があります。
成年後見人の解任に必要な書類と費用
成年後見人の解任を裁判所に申し立てる場合、以下のような書類と費用が必要になります。
費用
- 収入印紙:800円分
- 連絡用の郵便切手代:数千円程度
必要書類
- 解任申立書
- 被後見人本人の戸籍謄本
- 申立人の戸籍謄本(家族が申し立てるときなど)
- 解任事由を証明する資料 など
成年後見人を解任できないときの対処法
成年後見人を解任できない場合は、以下のような対処法があります。
- 監督処分や懲戒請求の申立て
- 成年後見監督人の選任申立て
- 後見人の追加
それぞれ見ていきましょう。
監督処分や懲戒請求の申立て
後見人を解任するには、財産の使い込みや後見業務をおろそかにしていた証拠がなければ、解任を認めてもらうことが難しくなります。
仮に後見人が証拠に繋がるような情報を開示しないようであれば、裁判所に「監督処分」を申し立てることで、後見人の業務状況などを調査してもらうことができます。
また、後見人が弁護士や司法書士などの専門家だった場合は、所属する弁護士会や司法書士会に「懲戒請求」を申し立てることで、同様に調査してもらえます。
なお、申立ての際には裁判所などに状況を詳しく説明する必要があるため、どんな疑いがあるのかきちんと整理して、できればその証拠になるものも準備しておくとよいでしょう。
成年後見監督人の選任申立て
必ずしも解任が認められる事情まではないものの、後見人による業務の状況に不安がある場合は、家庭裁判所に申立てをして成年後見監督人を選任してもらうことを検討しましょう。
成年後見監督人とは、後見人による後見業務を監督する人のことで、一般的には、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが多いです。
成年後見監督人から後見人に対する働きかけにより、後見人が業務を適切に行ってくれるようになることが期待できるでしょう。
なお、成年後見監督人が選任される場合、報酬(月2万円前後)を本人の財産から支払う必要がある点にはご注意ください(専門家が成年後見監督人に選任される場合は必ず発生します)。
後見人の追加
成年後見人は、あとから別の人を追加で選任してもらうことができます。後見人が業務をおろそかにしていたり、業務過多によって必要な手続に支障が出ていたりする場合は、追加を検討されてもいいでしょう。
別の後見人も業務に携わることで、不満がある後見人の態度が改まるかもしれませんし、後見人同士で業務を分担して、より適切なサポートを受けられるようになる可能性もあるからです。
後見人を追加するには、裁判所に申し立てる必要があります。ただし、追加の決定は裁判所が行いますので、認められないケースもある点にはご注意ください。
成年後見人のことでお悩みなら専門家に相談を
成年後見人の解任は、ご説明したような条件を満たしていなければ認められません。
仮に「自分や家族の思いどおりにしてくれないから」などの理由で解任を申し立てると、解任が認められないどころか、後見人との関係性が悪くなるおそれもあるでしょう。
したがって、成年後見人のことでお悩みであれば、まずは弁護士などの専門家に相談してから、解任するかどうか検討すべきです。
また、「成年後見制度の申立てをしようか迷っている…」という方であれば、ぜひ一度アディーレにご相談ください。
成年後見に関するご不明点を解消し、申立てのサポートも行います。
成年後見制度の申立てに関するご相談は何度でも無料です。一度お気軽にお問合せください。
- ※ 当事務所では、現在、成年後見等開始の申立業務のみ取り扱っており、当事務所の弁護士が成年後見人等に就任して後見業務等に従事することや成年後見人等の解任の申立業務は行っておりません。あらかじめご了承ください。

- この記事の監修者
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- 弁護士
- 橋 優介
- 資格:
- 弁護士、2級FP技能士
- 所属:
- 東京弁護士会
- 出身大学:
- 東京大学法学部
弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。