相続登記の費用は安くできる?安くする方法やデメリットを解説

相続登記の費用を安くするには、たとえば手続をすべて自分で行う方法が挙げられます。
ただし、費用を安くするどころか、場合によっては手続に失敗して余計な費用を払うことになるおそれがあるなど、注意すべき点も少なくありません。そもそも、費用を抑えること自体が難しい場合もあります。
そこで、このページでは相続登記の費用を安くする方法をいくつかご紹介します。ほかにも、費用を安くできる可能性がある状況や、安くする場合のデメリットも解説します。
相続登記の費用でお悩みの方は、ぜひ参考になさってください。
- この記事でわかること
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- 相続登記の費用を安くする方法
- 相続登記の費用を安くできる可能性がある人
- 相続登記の費用を安くする場合のデメリット
- 目次
そもそも相続登記にかかる費用とは?
相続登記とは、不動産(土地や建物)を相続で取得した際に名義を相続人へ変更する手続で、2024年4月1日から義務化されました。
相続登記の手続を行う場合、以下の費用がかかります。
- 申請に必要な書類の取得費
- 登録免許税
- 専門家に支払う報酬(依頼する場合)
各費用は相続時の状況で変動するため、一概に「○○円かかる」とは言い切れません。
したがって、各費用の内容を理解して、ご自身の状況に当てはめてみるのがよいでしょう。
以下でそれぞれ見ていきます。
申請に必要な書類の取得費
相続登記を行うには、亡くなった方の情報や、相続する不動産の価値がわかる書類を役所に提出する必要があります。
具体的には以下のような書類を取得しなければならず、取得費用は1通あたり200円~750円程度です。
- 戸籍謄本:450円
- 除籍謄本:750円
- 改製原戸籍謄本:750円
- 戸籍の附票の写し:300円
- 住民票(および住民票の除票)の写し:200~300円程度(※)
- 印鑑証明書:200~300円程度(※)
- 固定資産評価証明書:1通200~400円程度(※)
- ※ 各自治体で金額が異なる場合があります。
ただし、各書類を1通ずつ取得すればよいわけではなく、たとえば戸籍謄本なら被相続人が生まれてから亡くなるまですべての戸籍が必要になります。また申請書類とは別に、相続した不動産の情報を確認するために登記簿謄本(登記事項証明書)も必要になりますし、各書類の取寄せに郵送料もかかります。
そのため、状況次第で変わるものの、合計で数千円~1万円程度を見積もっておくとよいでしょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記を申請するときに国に納めなければならない税金のことです。
登録免許税の金額は、以下の計算式で求められます。
登録免許税=不動産の固定資産税評価額×0.4%
たとえば、申請する不動産の評価額が2,000万円なら、8万円の登録免許税がかかることになります。
ただし、登記を申請する不動産を「遺贈」によって引き継いだ場合は注意が必要です。
遺贈とは、本来相続人ではない人が遺言書によって財産を受け継ぐことをいいます。遺贈によって不動産を取得した場合の税率は2%となります。相続人の場合と比べて5倍の金額がかりますので、くれぐれも注意しましょう。
登録免許税について詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。
専門家に支払う報酬(依頼する場合)
相続登記は、弁護士などの専門家に依頼して、代わりに行ってもらうこともできます。
その場合に支払う報酬は、5万円~10万円程度が相場のようです。
なお、登記する不動産の数や相続人の人数など、状況次第で金額は変動する傾向がありますので、詳しくは各事務所に確認されたほうがよいでしょう。
相続登記にかかる費用を安くする方法
相続登記にかかる費用を安くするには、以下の方法を検討されるとよいでしょう。
- 自分で相続登記の手続をする
- ほかの相続手続で取得した書類を使用する
- ほかの相続人にも費用を負担してもらう
- 免税制度を利用する
- オンライン申請を行う
それぞれ詳しく見ていきます。
自分で相続登記の手続をする
相続登記の手続は、相続する不動産の所在地を管轄する法務局に対して、おおむね以下の流れで行います。
- 相続の対象となる不動産の調査・確認
- 相続登記の必要書類(戸籍謄本、住民票等)の収集
- 遺産分割協議書の作成(相続人間で遺産分割協議が必要な場合)
- 相続登記申請書の作成
- 管轄の法務局への申請
- 補正や訂正指示等への対応(法務局から指示がある場合)
- 相続登記完了
上記の手続をすべて自分で行うことができれば、専門家に報酬を支払う必要がなくなるため、5万円~10万円ほど節約することが可能です。
各手続の詳細については、インターネットで調べたり、法務局に確認したりすれば、すべてご自身で対応することも不可能ではありません。手間と負担はかかりますが、どうしても最低限の費用で済ませたい方は検討されてもよいでしょう。
ほかの相続手続で取得した書類を使用する
戸籍謄本や除籍謄本、印鑑証明などの書類は、相続登記以外に、預貯金の引き出しや相続税申告といった手続でも必要になります。
その際、希望すれば書類の原本を手続完了後に返却してもらえるため、その書類をそのまま相続登記でも使用することで、書類の収集費用(一般的に数千円程度)を節約できるでしょう。
また「法定相続情報証明制度」を活用する方法もあります。
この制度を申請すると、「法定相続情報一覧図の写し」が発行されるのですが、この写しは戸籍謄本に代わるものとして各種手続で使用できます。しかも、写しは何枚でも無料で発行してもらえますし、制度の申請にも費用がかかりません。
ただし、申請時には戸籍謄本などの書類は必要になるため、あくまでも「手続ごとに書類を取得する費用を節約できる」という点がメリットです。
ほかの相続人にも費用を負担してもらう
たとえば、以下のようなケースではほかの相続人に費用を負担してもらえる可能性があります。
- 誰も相続したがらない不動産だったため、仕方なく自分が相続する場合
- 今後も相続人たちで住んでいく予定の不動産を、代表して自分名義で相続する場合
(父が亡くなり、母と長男・次男が相続人で、代表して長男名義で相続登記するような場合)
上記のように、不動産を相続する人以外にも責任やメリットがある場合は、相続登記の費用を全員で出し合うことも考えられるでしょう。また、相続人全員の合意があれば、被相続人の相続財産から登記費用を捻出することも可能です。
免税制度を利用する
相続登記の申請に必要な登録免許税は、一定の条件を満たせば免除されます。
この制度が利用できれば、通常より費用を安くすることができるでしょう。
具体的には以下のような場合です。
- 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合
- 不動産の価額が100万円以下の土地の場合
- ※ 適用期限は2025年3月31日まで。2025年2月時点の情報です。
① についてはイメージしづらい部分もあるため、以下を例に考えてみましょう。
- 最初の土地の所有者のAさん(被相続人)
- Aさんが亡くなったことでその土地を相続したBさん(被相続人の息子)
- Bさんからさらに土地を相続したCさん(被相続人の孫)
仮にBさんが相続登記をしないまま亡くなった場合、本来Cさんは「AさんからBさん」と「BさんからCさん」の2回分の相続登記をしなければなりません。
しかし、①の免税制度を利用すると「BさんからCさん」にかかる登録免許税だけ支払えばよいことになるのです。

オンライン申請を行う
相続登記の申請はオンラインでも行うことができます。オンラインで手続をすることで、交通費を大幅に節約できる場合があります。
というのも、通常は法務局の窓口に行って手続を行うのですが、最寄りの法務局ではなく、申請する不動産の住所地を管轄する法務局で手続をしなければいけません。
そのため、たとえば申請する不動産が地方にある場合、わざわざ現地まで行くことになり、交通費が大きくかさむことがあるのです。
ただし、オンライン申請をするには専用ソフトをインストールしたパソコンが必要になります。また、オンライン申請を行ったあとに添付書類を郵送する必要もあり、オンラインで完結するわけでないことに注意しましょう。
詳しくは法務局のWebサイトをご覧ください。
相続登記の費用を安くできる可能性がある人
相続登記の費用を安くできる可能性があるのは、以下のような人です。
- 一般的な家族構成で、法定相続人の数が2~3人程度
- 申請する不動産の数が少なく、評価額も低い
- 今回の登記申請だけで済む(前の相続人もきちんと登記申請をしている不動産である)
- 平日の日中でも時間に余裕があり、難しい手続が苦にならない
上記に当てはまる場合は、手続を行ううえで考慮すべきことが少ないため、ご自身だけでも手続を完了させやすいでしょう。専門家に依頼せず、収集すべき書類も少なければ、自然と費用を抑えられるはずです。
反対に、被相続人の血縁関係が複雑だったり、申請する不動産の数が多かったりする場合は、費用を安くすることは難しいです。費用はかかりますが、弁護士などの専門家に相談・依頼することをおすすめします。
相続登記の費用を安くする場合のデメリット
相続登記の費用を安くすることばかりを考えていると、以下のようなデメリットがあります。
- 手続に失敗するおそれがある
- 時間や手間を取られる
- 精神的な負担になる
- 過料を科されるおそれがある
たとえば、手続の詳細を理解していないにもかかわらず、無理に自分だけで対応したとしましょう。その場合、間違った内容で申請をしたり、添付書類が不足したりする可能性が高くなり、当然登記が認められることはありません。
かといって準備に時間をかけすぎれば、相続登記の期限である3年に間に合わず、10万円以下の過料(罰金のようなもの)を科される可能性があります。
費用を安くしようとした結果、手続に失敗したり、余計なお金を支払う羽目になったりするのが心配な場合は、やはり弁護士などに依頼されるべきでしょう。
代わりに手続をしてもらったほうが、ご自身で行う手間や負担まで考慮すると、総合的には納得いく結果となるかもしれません。
相続登記のことならアディーレへ
相続登記は、相続人や不動産の状況次第では費用がかさむこともあるため、「少しでも費用を安くしたい」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、安くするために自分だけで無理に対応すると、手続に失敗するおそれがあります。費用の話の前に、そうなっては元も子もないでしょう。
アディーレでは、相続登記のご相談・ご依頼を積極的に承っています。さらに、相続登記に関するご相談は何度でも無料です。
ご相談いただくことで、すべて自分で対応できるような状況なのか、それとも専門家に依頼すべき状況なのか、冷静に判断してもらうこともできるでしょう。まずはお気軽にお問合せください。

- この記事の監修者
-
- 弁護士
- 橋 優介
- 資格:
- 弁護士、2級FP技能士
- 所属:
- 東京弁護士会
- 出身大学:
- 東京大学法学部
弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。