遺言・遺産相続の弁護士コラム

仮想通貨(暗号資産)の相続では最大110%の税率に?計算方法などを解説

相続税

仮想通貨を相続し、売却して利益を得た場合、金額次第では最大110%の税金が発生することがあります。つまり、手に入る金額より大きな税金を支払うことになり、逆に損をするおそれがあるということです。

しかし、110%もの税率が適用されるのは、一定の条件を満たすときだけです。
本ページでは、仮想通貨の相続に関わる税金の仕組みについてわかりやすく解説します。そのほか、実例を用いた計算方法や、仮想通貨を相続する流れ、注意点などについてもご説明いたします。

この記事でわかること
  1. 仮想通貨(暗号資産)の相続に関わる税金の仕組み
  2. 仮想通貨の相続に関わる税金の計算方法
  3. 仮想通貨を相続するまでの流れや方法

仮想通貨(暗号資産)の相続に関わる税金の仕組み

仮想通貨は、預貯金や不動産と同じように「相続財産」として扱われるため、相続時には相続税が発生します。
相続税の税率は、ほかの財産と同じように以下のように定められています。

法定相続分に応ずる各人の取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超から3,000万円以下15%50万円
3,000万円超から5,000万円以下20%200万円
5,000万円超から1億円以下30%700万円
1億円超から2億円以下40%1,700万円
2億円超から3億円以下45%2,700万円
3億円超から6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

表に記載のあるとおり、相続税率は取得金額に応じて大きくなっていきます。これを「超過累進課税」といいますが、特に仮想通貨は値上がり幅が非常に大きいため、相続税の負担も大きくなりやすいことに注意しましょう。

たとえば、有名なビットコインなら、2017年1月時点は1BTC=10万円ほどでしたが、2024年12月時点では1BTC=約1,500万円です。
概算にはなりますが、2017年に500万円分(50BTC)購入していた場合、2024年には約7億5,000万円となり、最高税率となる6億円を軽く超えます。取得時期と金額によっては、最高税率となるケースも少ないといえるでしょう。

仮想通貨の相続税評価額を算出する方法

実際にどれくらいの相続税が発生するか計算するためには、仮想通貨の「相続税評価額」を知る必要があります。
相続税評価額とは、簡単にいえば、相続税を算出するための基準となる金額のことです。
相続税評価額を求める方法はいくつかあり、以下のとおりです。

【活発な市場が存在する場合】
①相続開始日の残高証明書の金額を評価額とする
②取引所が公表する相続開始日の売却価格を評価額とする

【活発な市場が存在しない場合】
③仮想通貨の内容や性質、取引実態を考慮し個別に評価して決定する

①に出てくる残高証明書は、対象の仮想通貨を取り扱う取引所に依頼をすれば発行してもらえます。残高証明書には、日本円への換算レートが記載してもらうことができますので、その金額を用いるのがもっとも手軽でしょう。
②と③の方法については、評価額を確定するのに手間がかかるため、最初から税理士などの専門家へご相談されたほうが無難かもしれません。

なお、「活発な市場が存在する場合」とは、その仮想通貨が複数の取引所で取引されている場合のことです。たとえば、有名なビットコインをはじめ、イーサリアムやリップルなどの代表的なアルトコインは「活発な市場が存在する」といえます。

最大110%の税金が発生して赤字になるケースもある

相続した仮想通貨を売却した場合は、さらに所得税と住民税が発生します。
所得税率について以下の表のとおりで、最大だと45%にもなります。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
  • 平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することとなります。

そのうえ、一律10%の住民税も課税されるので、先ほどの相続税の税率(10~55%)と合算すると、最大110%の税金が発生することになります。

なお、仮想通貨に似た資産として株式や投資信託がありますが、株式などの売却益や配当金は、所得税と住民税を合わせて最大でも約20%しか課税されません。仮想通貨の税率も、今後の法改正で同様となるかもしれませんが、しばらく変わることはないでしょう。

仮想通貨にかかる税金を軽くする方法

仮想通貨にかかる税金を軽くする方法としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 被相続人が存命のうちに売却してもらい、現金のかたちで相続する
  2. 被相続人が存命のうちに、生前贈与してもらう
  3. 相続放棄をする

ポイントは、被相続人が存命のうちに対策を行うことです。

被相続人の存命中に仮想通貨を売却しておいてもらえば、所得税を支払うのは被相続人となりますので、相続人は相続税の負担だけで済むようになります。
売却せずとも、贈与というかたちで受け取っておけば、基本的に相続財産には含まれませんので、相続税の負担を軽減することができます。

ただし、贈与を受けた場合は、金額次第で今度は「贈与税」が発生します。また、どちらの方法であっても、仮想通貨の価値が高騰していれば、いずれにせよ高額な税金を負担しなければなりません。
その場合は「相続放棄」をするしかないでしょう。仮想通貨を含むすべての財産を相続できなくなりますが、税金を支払う義務はなくなります。

仮想通貨の相続に関わる税金の計算方法

仮想通貨を相続した場合にかかる税金について、以下の例を用いて実際に計算してみましょう。

相続財産:仮想通貨(100BTC)
被相続人:父
法定相続人:長男
相続割合:長男が全額相続

※計算をわかりやすくするため、相続財産を仮想通貨のみにしています。

【計算例】仮想通貨を相続したとき

①仮想通貨の相続税評価額を算出
相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点の残高証明書を取り寄せた結果、1BTC=500万円ということがわかったとします。

500万円(1BTCあたりの金額)×100(BTCの数量)=5億円(相続税評価額)

②正味の遺産額を算出
今回は相続財産が仮想通貨のみという想定のため、先ほど算出した相続税評価額がそのまま正味の遺産額となります。

5億円(正味の遺産額)

③課税遺産総額を算出
正味の遺産額から基礎控除額を引いて課税遺産総額を算出します。
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で求めることが可能なので、今回は3,600万円となります。

5億円(正味の遺産額)―3,600万円(基礎控除額)=4億6,400万円(課税遺産額)

④相続税額を算出
最後に課税遺産額にそのまま相続税率をかけて相続税額を算出します。相続税率に関しては、冒頭でご説明した早見表を参考にします。

4億6,400万円(課税遺産額)×50%(相続税率)-4,200万(控除額)=1億9,000万円(相続税額)

【計算例】相続した仮想通貨を売却したとき

100BTCを相続後、5億円ですべて売却できたとしましょう。
被相続人が取得するのにかかった費用が5,000万円(※)とすると、実際の損益は以下のようになります。

  • 取得時単価1BTC=50万円と仮定。単純化のために譲渡費用も少額含んでいるとします。

①損益額を算出

5億円(売却価額)-5,000万円(取得原価)=4億5,000万円(損益)

②所得税額を算出
そして、この損益に所得税率をかけます。所得税率は、前にご説明した早見表を確認して適用しましょう。

4億5,000万円(損益)× 45%(所得税率) ―479万6,000円(控除額)=1億9,770万4,000円(所得税額)

③住民税額を算出
さらに、一律10%の住民税も課税されます。

4億5,000万円×10%=4,500万円(住民税額)

④全ての税金を合算
最後に、先ほどの相続税と合算して、最終的な税額を出してみましょう。

1億9,000万円(相続税額)+1億9,770万4,000円(所得税額)+4,500万円(住民税額)=4億3,270万4,000円

つまり、5億円の仮想通貨があったとしても、相続して売却すると、約7,000万円しか手元に残らないということになります。
仮にBTCの金額がもっと高騰していれば、税額もさらに高くなるため、手元に1円も残らないどころか赤字になることもあり得るでしょう。

仮想通貨を相続するまでの流れ

仮想通貨を相続する場合は、一般的には以下の流れで行います。

  1. 仮想通貨の取引所(交換業者)へ問い合わせる
  2. 指示された必要書類を作成・返送する
  3. 仮想通貨の払い戻しを受ける

それぞれ見ていきましょう。

①仮想通貨の取引所(交換業者)へ問い合わせる

まずは被相続人が取引を行っていた仮想通貨の取引所(交換業者)へ問い合わせて、被相続人の死亡と相続を希望する旨を伝えます。

なかには、「IDやパスワードがわからない…」と困っている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、ID・パスワードがわからなくても相続手続を受け付けてくれる取引所もあるようなので、併せてその旨も伝えてみるとよいでしょう。

②指示された必要書類を作成・返送する

相続手続の受付が済んだら、取引所から必要書類の案内があるため、その指示どおりに書類を準備していきましょう。一般的には、身分証のほかに、「戸籍謄本」や「印鑑証明書」、「法定相続情報一覧図」などを求められることが多いようです。

書類が準備できたら、取引所の指示に従って書類を送付しましょう。

③仮想通貨の払い戻しを受ける

書類が確認されて無事に手続が完了されたら、仮想通貨の払い戻しを受けることができます。
払い戻しについては、仮想通貨のまま受け取れる場合と、日本円に換金されてから受け取れる場合に分かれます。

仮想通貨のまま受け取る場合は、自分も仮想通貨用の口座を持っておく必要があるため、持っていない方は事前に用意しておくとスムーズです。
日本円として受け取る場合は、換金時に所得税が発生する可能性があることに注意してください。前にご説明したとおり、金額次第では多額の税金を負担することになるかもしれません。

仮想通貨の相続で気をつけるべきこと

仮想通貨を相続する場合は、以下のような点に気を付けましょう。

  1. 相続手続が完了するまでは取引を行ってはいけない
  2. 被相続人のスマートフォンやパソコンを処分しない
  3. デジタル資産として財産目録などに記載しておく

相続手続が完了するまでは取引を行ってはいけない

相続の手続が完了するまでは、仮想通貨は被相続人の財産です。また、相続人が複数いて、遺産分割の必要があれば、遺産分割協議が終了するまで相続人全員の共有財産となります。

したがって、手続完了前に仮想通貨を売却したり、仮想通貨を利用した取引を行ったりすることはできません。勝手に取引をした場合、法律違反を問われるおそれもあるため、くれぐれもご注意ください。

被相続人のスマートフォンやパソコンを処分しない

仮想通貨を相続する場合、各種手続のためにIDやパスワードなどの情報が必要となります。
被相続人が丁寧にまとめてくれていれば別ですが、そうでない場合は被相続人のスマートフォンやパソコンに必要な情報が残っていることがあります。
そのため、被相続人のスマートフォンやパソコンは簡単に処分せずに、手元に残しておくといいでしょう。仮に相続発生時点では仮想通貨の存在を知らなかったとしても、のちのち見つかることも考えられます。

デジタル資産として財産目録などに記載しておく

子どもや孫に仮想通貨を相続させたいとお考えの方は、必ず相続人に仮想通貨のことを話しておきましょう。そして、デジタル資産として財産目録などに記載して、きちんと残しておくべきです。

というのも、預貯金や不動産などと比べると、仮想通貨は見落としが多い相続財産だからです。最悪の場合、見つけられないまま放置されてしまうこともあるでしょう。
そうはならないように、仮想通貨の種類や数量、取得額などはもちろん、IDやパスワード、保存したウォレット(※)などについての情報はどこかにまとめておくことをおすすめします。

  • 仮想通貨を保管・管理するためのツールやサービスのこと。オンラインに限らず、USBメモリや紙に秘密鍵などの重要な情報を残す場合もある。

相続のことならアディーレへ

仮想通貨は、株式などよりも値動きの幅が大きく、思いがけず高額な相続財産を得られるメリットがあります。
一方で、今回は説明を省いていますが、「マイニング」や「レンディング」、「エアドロップ」といった仮想通貨特有の報酬分の計算が必要になることもあるなど、非常に複雑な面も多いです。
仮想通貨に詳しい方ならともかく、相続によって初めて仮想通貨に触れる方の場合、正確な金額が算出できず、相続税の申告漏れが発生するかもしれません。

相続財産に仮想通貨が含まれているということで不安があれば、ぜひアディーレ法律事務所へご依頼ください。仮想通貨などが関係して、複雑な計算が必要であれば税理士などの専門家へ任せた方が無難です。
アディーレなら、相続に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問合せください。

松尾 大志
この記事の監修者
協力税理士
松尾 大志
資格
税理士
出身大学
高知大学人文学部

相続は、人生における大きな出来事の一つであり複雑な手続きを伴います。たいせつなひとをお送りしたあとで、一定の期間内に様々な作業を行っていかなければなりません。心労を抱えた中での作業は難しいこともあろうかと存じます。相続税申告に関するご不明な点やご不安な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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