未成年後見人とは?必要となるケースや選任方法、注意点などをわかりやすく解説
未成年後見人とは、両親の死亡などにより親権者がいなくなってしまった未成年者の法定代理人です。親に代わって、監護養育、財産管理、契約等の法律行為を行います。
今回は、未成年後見人について、どのような制度か、必要となるケースや選任方法、注意点などをわかりやすく解説します。
- この記事でわかること
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- 未成年後見人になれるのは誰か
- 未成年後見人を選ぶ方法や手続の流れ
- 未成年後見人を選任する際の注意点
- 目次
未成年後見人とは?
未成年後見人とは、親権を持つ者がいない未成年者を保護するために選任される法定代理人のことです。未成年後見人は、基本的に親権者と同じ権利義務を持っており、未成年者の監護養育、財産管理、契約等の法律行為などを行います。
未成年後見人がいない場合、未成年者名義の口座が作れない、未成年者が勝手にした不利な契約を取り消せない、などの不都合が生じます。
未成年後見人になれる人
未成年後見人になるための資格は特にありません。また、未成年者の親族であることなどの制限もありません。成人の兄弟姉妹や祖父母はもちろん、法人でも未成年後見人になれますし、複数人でも問題ありません。
ただし、下記の人は欠格事由に該当するため、法律上、未成年後見人になることはできません(民法第847条)。
【法律上未成年後見人になれない者】
- 未成年者
- 破産者で復権していない者
- 行方不明者
- 家庭裁判所から法定代理人や保佐人、補助人を解任された者
- 未成年者に対して訴訟中の者または過去に訴訟をした者、およびその配偶者や直系血族(祖父母や父母など)
親権者と同じ権利義務がある
未成年後見人には、親権者と同じ権利義務があり、未成年者の身上監護と財産管理、契約等の法律行為の代理を行います。
具体的には、就任時、就任中、終了時のそれぞれの時期に応じた仕事があります。
詳しくは下記の表のとおりです。
時期 | 主な仕事内容 |
---|---|
就任時 | ・未成年者の財産の調査、「財産目録」「年間収支予定表」の作成および家庭裁判所への提出 ・未成年者の生活、教育、財産管理に関する費用と後見事務費の予算策定 |
就任中 | ・未成年者の監護・養育等(身上監護) ・財産の管理、法律行為の代理 ・家庭裁判所への定期的な報告(後見事務の報告・財産目録の提出) |
終了時 | ・本人、養親、相続人などへ財産の引継ぎ ・後見終了の届け出 |
成人すると終了する
未成年者が成人した場合、未成年後見人の任務は終了します。
未成年者の後見が終了する理由は下記のとおりです。
【未成年者の後見が終了する理由】
- 成人した
- 養子縁組をした
- 結婚した
なお、未成年後見人の任務が終了した場合には、以下のような手続が必要です。
【終了した場合にすべきこと】
- 未成年者の本籍地または後見人の住所地の市町村役場に、後見終了届を提出する(後見終了の日から10日以内)
- 未成年者が結婚または養子縁組をした場合には、 ①に加えて、未成年者の新しい 戸籍謄本を添付したうえで、連絡票(※)を使用して家庭裁判所に連絡する
- 後見終了の日から2ヵ月以内に管理財産を計算し、成人または結婚した未成年者に引き継ぐ。
未成年者が養子縁組した場合は養親に引き継ぐ。
管理財産を引き継ぐ際、財産目録を作成のうえ、成人または結婚した未成年者、もしくは未成年者の養親に引継書へ署名押印をしてもらう - 引継書、財産目録および未成年後見事務報告書を家庭裁判所に提出する
未成年者の戸籍に記載される
未成年後見人が選任されると、下記の情報が未成年者の戸籍謄本(抄本)に記載されます。
- 未成年後見人選任裁判の確定日
- 未成年後見人の戸籍情報(本籍と筆頭者)
- 未成年後見人の氏名
なお、現状、未成年後見人の代理権を証明する公的書類は特にありません。各所への届出をする際などの証明には、未成年者の戸籍謄本(抄本)を使用します。
未成年後見人が必要となるケース
主に下記のような場合に未成年後見人が必要となります。
- 両親が2人とも死亡した(または行方不明になった)
- 両親の離婚後、親権を持った一方が死亡した(または行方不明になった)
- 子どもを虐待するなどして両親が親権を失った
なお、離婚や親の死亡などで親権者が一人になった場合でも、1人でも親権者がいるのであれば、未成年後見人は必要ありません。
未成年後見人を選任する手続とその流れ
未成年後見人の選任方法は下記の2とおりです。
- 遺言で指定する
- 家庭裁判所に申し立てる
それぞれの手続とその流れについて詳しく解説します。
遺言で指定する場合
未成年者の親権者は、未成年後見人を遺言で指定することができます(民法第839条)。
基本的に下記のような流れで手続を進めます。
手順1:遺言書で未成年後見人を指定する
遺言書を作成する場合は、公正証書遺言で作成するのが賢明です。公正証書遺言で作成をしておけば、紛失のリスクや後の紛争のリスクを減らせます。
自筆証書遺言で作成している場合は、「検認」という手続を親権者死亡後に行わないといけないため、未成年後見人の就任までに時間がかかります。すると、その間、未成年者の親権を行う人が不在になってしまいます。ですから、未成年後見人を指定する遺言を作成するときは公正証書遺言で作成することが大事なのです。
手順2:必要書類を収集して市区町村役場に届出
遺言で未成年後見人と指定されたご本人が、未成年後見人に就職してから10日以内に未成年者の本籍地または未成年後見人の所在地のいずれかの市区町村役場に届け出ます(戸籍法第81条)。
届出の際には、原則として以下の書類が必要です。
【未成年後見人の届出に必要となる主な書類】
- 市区町村役場に備え付けの「未成年者の後見届」
- 未成年後見人に指定された自筆証書遺言や公正証書遺言の謄本 など
状況によってはこれら以外の書類が必要となる場合もあります。届出先の市区町村役場へあらかじめ電話などで確認しましょう。
なお、遺言で指定された未成年後見人には家庭裁判所への報告義務がなく、身上監護や財産管理などがきちんと行われるか確認できないことがデメリットです。そのため、遺言では未成年後見監督人も指定しておくとよいでしょう。
家庭裁判所に申し立てる場合
未成年後見人が遺言で指定されていない場合には、未成年者本人やその親族、およびそのほかの利害関係人が家庭裁判所に請求することにより、未成年後見人を選任してもらうことができます。
未成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう場合、基本的に下記のような流れで手続を進めます。
手順1:必要書類の収集と作成をする
家庭裁判所に未成年後見人を選任してもらうには、次のような書類が必要です。
【取り寄せる書類】
- 未成年者の戸籍謄本
- 未成年後見人候補者の戸籍謄本
- 未成年者の住民票または戸籍の附票
- 未成年後見人候補者の住民票または戸籍の附票
- 親権者がいなくなったことのわかる資料(親権者の死亡がわかる戸籍謄本など)
【作成する書類】
- 未成年後見人選任申立書
- 申立事情説明書
- 親族関係図
- 財産目録
- 相続財産目録
- 収入予定表
- 未成年後見人候補者事情説明書 など
申立てに必要な書類の様式は下記のWebサイトよりダウンロードできます。
申立てをお考えの方へ(未成年後見人選任) 東京家庭裁判所後見センター(裁判所Webサイト)
このように、家庭裁判所への申立てにはさまざまな書類が必要となるうえ、状況によってはこれら以外の書類も必要となる可能性があります。
そのため、弁護士などの専門家にアドバイスを受けながら手続を進めることをおすすめします。
手順2:家庭裁判所に申立てをする
必要な書類が揃ったら、家庭裁判所に未成年後見人の選任申立てを行います。
管轄は、未成年者の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立ての際には未成年後見人の候補者を記載することができますが、必ずしもこの候補者が選任されるとは限らず、家庭裁判所の判断で候補者以外の者が選任されることもあります。
手順3:戸籍への掲載
関係者などとの面接後、家庭裁判所で未成年後見人が選任されると、選任からおおむね2週間程度で、未成年者の戸籍に未年後見人の情報が掲載されます。
この手続は家庭裁判所が行いますので、遺言で選任された場合とは異なり、未成年後見人が自ら届出をする必要はありません。
未成年後見人を選ぶ際に注意すべきポイント
未成年後見人を選定する際には以下のような注意すべきポイントがあります。
- 報酬が発生する可能性がある
- 簡単には解任や辞任ができない
それぞれ詳しく見ていきます。
報酬が発生する可能性がある
未成年後見人から請求があった場合、家庭裁判所の判断により、未成年後見人の事務の内容に応じて、未成年者の財産からの支払いが認められる場合があります。
報酬の額は2~4万円ほどで、後見人として行った事務の内容や未成年者の財産の額などを参考にして決定されます。
未成年後見人が報酬を受け取るには、家庭裁判所に対して「報酬付与の審判」の申立てをする必要があります。
報酬を付与する旨の審判があるまでは、勝手に未成年者の財産から報酬を差し引くことはできません。
簡単には解任や辞任ができない
未成年後見人が決定されると簡単に解任することはできません。
未成年後見人が未成年者の財産を不正に使い果たした、未成年者の世話をしなかった、といった場合、家庭裁判所は未成年後見人を解任することがあります。
しかし、「未成年後見人が親族の思いどおりに行動しない」、「何となく不信感がある」、「単に気に入らない」といった理由での解任は難しいです。
また、未成年後見人が辞任したい場合も同様です。「病気や高齢で未成年後見人の仕事をすることが困難になった」というような「正当な理由」がなければ、家庭裁判所の許可を得て辞任することはできません。
未成年後見人の選任で迷ったら弁護士へ
未成年後見人の選任にあたっては、家庭裁判所に提出する書類が多く、複雑な手続も必要なため、ご自身で手続を行うことに不安を感じる方も多いでしょう。
また、一度未成年後見人になると簡単に解任ができないため、未成年後見人の選任申立てをするべきか悩まれる方も多いと思います。
しかし、弁護士に相談や依頼をすれば、過不足なく必要な書類を準備し、スムーズに手続を進めることが可能です。
さらに、弁護士であれば、家庭裁判所に未成年後見の申立てをすべきか、遺言で指定すべきかなどを検討する際にも相談いただけます。
未成年後見人を選任したいときには、制度の概要を正確に把握しておくと安心です。遺言で親族を未成年後見人に指定するとしても事前に弁護士に相談しておくとよいでしょう。
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- この記事の監修者
-
- 弁護士
- 橋 優介
- 資格:
- 弁護士、2級FP技能士
- 所属:
- 東京弁護士会
- 出身大学:
- 東京大学法学部
弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。