相続対策には生命保険が有効?メリットやデメリットについて解説
相続税対策としてよく生命保険が活用されるのは、死亡保険金に「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられているからです。またそれ以外にも、生命保険には相続時に役立つ特徴があります。
一方で、生命保険にはデメリットもあるため、闇雲に契約すべきではありません。
本記事では、相続対策に生命保険を活用するメリットやデメリット、相続対策に適した保険の種類などについて解説します。
相続対策に生命保険の活用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
- この記事でわかること
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- 相続対策に生命保険を活用するメリット・デメリット
- 生命保険にかかる税金の違い
- 相続対策におすすめの生命保険の種類
- 目次
そもそも生命保険とは?
生命保険は、大勢の人で保険料を負担し合い、契約時に決められた支払理由が生じたときに、必要な保障を受けられるというものです。
代表的なものは「死亡保険」ですが、「がん保険」や「医療保険」なども生命保険に含まれます。
また以下の言葉は、生命保険に関連する基本的な用語です。契約する際にも必ず出てきますので、ぜひ違いを理解しておきましょう。
- 「契約者」 =保険料を支払う人
- 「被保険者」=保険の対象となる人
- 「受取人」 =保険金の支払い先になっている人
上記3つは、それぞれ違う人がなることもできますし、すべて1人の名義にすることもできます。
たとえば、契約者と被保険者を自分名義にして、受取人を大切な家族に指定する、というのはよくあるケースです。
契約状況によってかかる税金が変わる
医療保険などによって支払われる保険金は、基本的に税金はかかりませんが、死亡保険金や個人年金については税金が発生します。
しかし、その税金は保険の契約状況によって種類が異なってくるため、注意が必要です。
被保険者 | 契約者 | 受取人 | 発生する税金 |
---|---|---|---|
Aさん | Bさん | Bさん | 所得税 |
Aさん | Aさん | Bさん | 相続税 |
Aさん | Bさん | Cさん | 贈与税 |
要するに、契約者(保険料負担者)と受取人が同一なら所得税、被保険者と契約者(保険料負担者)が同一なら相続税、すべて異なるなら贈与税が課税されます。
どの税金が発生するかによって、税計算や利用できる非課税制度などもまったく異なってくるため、十分に検討したうえで契約するようにしましょう。
生命保険を相続対策に活用するメリット
生命保険にはさまざまな特徴があり、特に相続の際に活用できることが多いです。たとえば、死亡保険金には相続税が発生するケースもあるとご説明しましたが、その負担を軽減できる特例も用意されています。
以下で詳しく見ていきましょう。
非課税制度を利用して相続税の節税になる
生命保険のなかでも、死亡保険金には特別に非課税制度が設けられています。死亡保険金には、遺族の生活を保障するという大事な目的があるためです。
死亡保険金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」となります。
たとえば、以下のようなケースで考えてみましょう。
【死亡保険金の非課税額の計算例】
死亡保険金:1,000万円
被保険者:夫
契約者:夫
受取人:長男
被相続人:夫
法定相続人:妻、長男の2人
死亡保険金の非課税限度額:500万円×2人=1,000万円
上記の例であれば、非課税限度額に死亡保険金が収まるので相続税はかからなくて済みます。
しかし、なかには保険金の額がもっと大きいケースもあるでしょう。そういった場合を見越して、受取人は子どもでなく、配偶者にしておくほうが無難です。配偶者であればさらに別の控除も受けられるため、課税負担をより軽減できる可能性が高いからです。
受取人固有の財産になる
生命保険によって支払われる死亡保険金は「受取人固有の財産になる」という特徴があります。
言い換えれば、死亡保険金は遺産分割の対象とはならずに、受取人がそのまま受け取れるということです。
相続財産は、遺言書がない場合、相続人同士の話合いで分割されることになります。そのため、話合いの展開次第では、自分が残したい人に十分な財産が行き渡らない可能性があるのです。死亡保険金というかたちであれば、そういった心配は必要ありません(※)。
- ※ ほかの相続財産より、死亡保険金の金額が著しく大きい場合など、状況次第では「特別受益」としてみなされて、遺産分割の対象になる場合もあります。
現金としてすぐに活用できる
生命保険の死亡保険金は、受取人の口座に振り込まれた時点で、受取人が自由に活用できます。
相続が発生すると、葬儀費用や納税資金など、まとまった現金が必要になる場合が多いため、手元にすぐに現金が入るのは大きなメリットといえるのです。
仮に相続財産が不動産だけだった場合は、売却などで時間や手間がかかります。預貯金についても、遺産分割が発生すると、手続が完了するまで凍結されてしまうので、家族がすぐに引き出すことができず困ることになります。
相続放棄しても受け取れる
被相続人に多額の借金があった場合などは、相続放棄を選択するケースもあるでしょう。しかし、相続放棄をすると、合わせて預貯金なども手放すことになってしまいます。
ところが、生命保険の死亡保険金であれば、受取人固有の財産であることから、相続放棄をしても受け取ることができます。もし、相続が発生するまでに返済し切れない借金などがある場合は、残された家族のためにもぜひ検討すべきです。
ただし、相続放棄をすると、先ほどお話した死亡保険金の非課税制度を利用できなくなるため、その点には注意が必要です。
相続対策に生命保険を活用するデメリット
生命保険には、相続対策に活用するうえでメリットだけでなくデメリットもあります。
場合によっては逆効果となるケースもあるため、その点も十分に理解したうえで契約すべきです。
以下で詳しく見ていきましょう。
相続トラブルの火種になることがある
生命保険から支払われる死亡保険金は、たとえ遺産分割が発生した場合でも、ほかの相続人と話合いをすることなく受取人に渡されます。
このとき、遺産分割の対象になる財産より死亡保険金の金額が大きければ、「受取人だけが優遇されている!」として、トラブルに発展するかもしれません。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、相続財産がいくらになるかを事前に計算しておくことが重要です。死亡保険金とのバランスを考慮して、偏った配分にならないようにしておきましょう。
保険料の負担や元本割れが発生する
生命保険を契約すると、当然ですが保険料が発生します。解約や自分が亡くなるまで、基本的に保険料はずっと支払わなければなりません。安易に契約すると、いざというときに資金が不足するおそれがあるのです。
また、負担が大きいからといって早期解約すると、支払った保険料が無駄になります。解約返戻金のある契約ならまだいいですが、支払った金額を下回って「元本割れ」をするリスクが高いでしょう。
したがって、生命保険の契約は必ず計画的に行うべきです。
たとえば、相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という基礎控除が設けられているので、この控除額と併用する方法があります。
具体的には、残したい金額が基礎控除額を上回る場合、その差額分を生命保険の支払いに回します。これなら、本来は課税されてしまう差額分も、死亡保険金の非課税枠を活用して家族に残すことが可能です。
相続対策におすすめの生命保険は何?
生命保険にはさまざまな種類がありますが、なかでも死亡保険はさらに3つの種類に分けられます。
一般的な死亡保険の種類 | 概要 |
---|---|
定期保険 | 一定期間の死亡を保障する保険。契約期間に限りがある。 |
終身保険 | 死亡まで一生涯を保障する保険。契約期間の限りはない。 |
養老保険 | 死亡保障と貯蓄の両方を兼ねた保険。契約期間に限りはあるが、被保険者の死亡に関わらず給付がある。 |
死亡保険のなかで、相続対策として活用するのにおすすめの保険は終身保険です。
相続というのは、実際にいつ発生するかわかりません。そのため、契約期間に限りのある定期保険や養老保険の場合、必要なときに給付されないリスクがあるのです。
ただ、「子どもが成人するまでの保障でいい」など、期間が明確になっている場合は、定期保険を契約してもよいでしょう。終身保険より保険料が安いため、その分保障を厚くすることができます。
相続対策のことなら専門家へご相談を
自分が亡くなったあと、大切な家族には少しでも苦労をかけたくないものです。そのために生命保険などを活用して、相続対策を検討することは非常に重要です。
とはいえご説明してきたように、相続対策を効果的に行うには、前もってさまざまな内容を検討しなければなりません。今回ご説明した生命保険による対策だけでなく、別の方向性を検討したほうがいい場合もあります。
相続対策をお考えの方は、ご自身にとって最善な手段を選べるように、一度税理士などの専門家へご相談ください。
- この記事の監修者
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- 協力税理士
- 松尾 大志
- 資格:
- 税理士
- 出身大学:
- 高知大学人文学部
相続は、人生における大きな出来事の一つであり複雑な手続きを伴います。たいせつなひとをお送りしたあとで、一定の期間内に様々な作業を行っていかなければなりません。心労を抱えた中での作業は難しいこともあろうかと存じます。相続税申告に関するご不明な点やご不安な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。