遺言書に書かれていない財産があった場合、どうやって分ける?
遺言書は、相続財産の取扱いについて故人の意向を実現する方法であり、相続トラブルを未然に防ぐための重要な手段です。
しかし、注意深く作成したつもりでも、財産についてそもそも記載漏れがあったり、遺言書の作成以降に財産の変動があったりすることで、遺言書に書かれていない財産が発生してしまうケースは少なくありません。
では、遺言書に記載のない財産があった場合、その財産はどうなるのでしょうか?
今回は、遺言書に記載のない相続財産の取扱いについて解説していきます。
- この記事でわかること
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- 財産の記載漏れがあった遺言書の効力
- 遺言書に記載漏れのあった財産の分け方
財産の記載漏れがあった遺言書の効力
遺言書に記載がない財産があとから出てきても、遺言書そのものが無効となることはありません。
つまり、遺言書に記載されている財産については有効となるので、その部分については遺言書の内容に従って相続が行われることになります。
たとえば、遺言書に不動産Aと預金口座Bの記載があり、預金口座Cの記載漏れがあった場合、不動産Aと預金口座Bは遺言書の内容どおりに相続を進められることになります。
ただし、遺言書そのものが要件を満たしていないと、遺言が無効になるので注意が必要です。たとえば、自筆証書遺言書の場合は、作成者本人により自筆で書かれていることや、日付、氏名の記載や押印がなされているなどの条件が整っていないと、無効になってしまいます。
遺言書に記載漏れのあった財産の分け方
では、上記の例で、遺言書に記載のなかった預金口座Cの預金はどのように分ければよいでしょうか。
この点については、遺言書がなかった場合と同様、相続人による話合いによって分け方を決めるか、民法で定められた法定相続分に従って相続されます。
たとえ、遺言書によって財産を多く受け取るように優遇された相続人がいたとしても、記載漏れがあった財産については優遇されません。
たとえば、相続人として妻と子供が2人いる場合、遺言書に記載のない財産を法定相続分に従って分けるのであれば、妻が2分の1、子どもがそれぞれ4分1ずつ相続することになります。
遺言書に書かれていないマイナスの財産が見つかったら?
遺言書に記載のなかった財産が、借金などのマイナスの財産だった場合は、相続開始と同時に法定相続分に従って各相続人に引き継がれます。
そして債権者からも、法定相続分に従って請求されることになります。
一方で、相続人同士で負担割合について話合いを行い、そこで合意すること自体は可能です。ただし、先ほどご説明したように、あくまでも請求は法定相続分に従って行われるため、のちに相続人同士で精算することになります。
たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。
遺産総額:4,000万円
相続人:故人の長男A、長女Bの2名
遺言による相続割合:A 3,000万円、B1,000万円
遺言書に記載のないマイナスの財産:借金400万円
このとき、法定相続分による請求は、A、Bそれぞれに200万円となりますが、話合いによって、遺言による相続割合と同様に3:1の割合で負担することになりました。つまりAが300万円、Bが100万円支払うということです。
その場合、一旦AとBがそれぞれ200万円を支払ったあと、Bが差額分の100万円をAに請求して精算することになります。
遺産分割でお困りならアディーレへ
ご説明したように、遺言書に記載のない財産が見つかった場合は、法定相続分で分けるか、相続人同士で話合いをするか、どちらかの対応が必要になります。
しかし、遺言書による指定とは異なり、話合いになった場合は相続人同士のトラブルが発生し、遺産分割がまとまらないおそれもあるでしょう。
アディーレなら、遺言・遺産相続に関するご相談は何度でも無料。遺産分割の話合いでお困りの際は、ぜひお気軽にお問合せください。
- この記事の監修者
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- 弁護士
- 橋 優介
- 資格:
- 弁護士、2級FP技能士
- 所属:
- 東京弁護士会
- 出身大学:
- 東京大学法学部
弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。