親の遺産は兄弟姉妹でどう分ける?相続トラブルの例と円満解決の方法
親が亡くなった場合、子はもう一方の親が生きているかどうかに関わらず、遺産を相続することになります。そして、兄弟姉妹がいる場合には、兄弟姉妹との遺産分割が必要です。
しかし、遺産分割の方法や手続の進め方について、兄弟姉妹間でもめてしまうケースも少なくありません。
そこでこのコラムでは、親が亡くなった際の兄弟姉妹間の遺産の分割方法とそのポイント、兄弟姉妹間でよくある相続トラブルと対処法について解説します。
兄弟姉妹間で円満に相続をするためにも、理解を深めていきましょう。
- この記事でわかること
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- 親の遺産の兄弟姉妹間の分割方法
- 親の遺産を兄弟姉妹で相続するときのポイント
- 兄弟姉妹間でよくある相続トラブルと対処法
- 目次
兄弟姉妹間で親の遺産を相続するときの割合
法律に基づいて相続人それぞれが受け取れる遺産の割合を、「法定相続分」といいます。
親が亡くなった際の子(兄弟姉妹)の法定相続分は、以下のいずれかです。
- もう一方の親と子(兄弟姉妹)で相続するケースでは2分の1
- 子(兄弟姉妹)のみで相続するケースでは全部
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
もう一方の親と子(兄弟姉妹)で相続するケース
亡くなった親の相続人にあたるのがもう一方の親と子(兄弟姉妹)である場合、法定相続分は親と子でそれぞれ2分の1ずつです。子が複数人いる場合は、2分の1を兄弟姉妹の人数で均等に分割します。
【具体例】
父が亡くなり、母と姉(長女)・兄(長男)・弟(二男)が相続人。遺産総額が6,000万円のケース
母 | 姉 | 兄 | 弟 | |
---|---|---|---|---|
法定相続分 | 2分の1 | 6分の1 | 6分の1 | 6分の1 |
法定相続分に対応する金額 | 3,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
子(兄弟姉妹)のみで相続するケース
亡くなった方の相続人にあたるのが子(兄弟姉妹)のみである場合、子が財産のすべてを相続することになります。子が複数人いる場合には、兄弟姉妹の人数で均等に分割します。
【具体例】
父が亡くなり、姉(長女)と兄(長男)と妹(二女)と弟(二男)が相続人。遺産総額が1億円のケース
姉 | 兄 | 妹 | 弟 | |
---|---|---|---|---|
法定相続分 | 4分の1 | 4分の1 | 4分の1 | 4分の1 |
法定相続分に対応する金額 | 2,500万円 | 2,500万円 | 2,500万円 | 2,500万円 |
親の遺産を兄弟姉妹で相続するときのポイント
親の遺産を子である兄弟姉妹で相続する際は、手続をスムーズに進めるためにも以下のポイントをおさえておきましょう。
兄弟姉妹は平等に遺産を分割する必要がある
兄弟姉妹の法定相続分は平等です。長男かどうかなどによって、割合が変わることはありません。
旧民法では「家督相続(かとくそうぞく)」という相続の方法がありました。これは、「戸主(家長)が隠居や死亡した際、長男がすべての遺産を相続する」という考え方に基づいた方法です。
しかし、現行法ではそのような考え方は取られていません。そのため、兄弟姉妹は平等に遺産を分割する必要があるのです。
養子や異父・異母兄弟とも遺産を分割する必要がある
以下に該当する子についても、実子と同じように相続の権利があります。
- 養子の兄弟姉妹
- 異父・異母兄弟姉妹(前の配偶者との子など)
- 認知された非嫡出子(結婚していない男女の間の子) など
これらの方も含め、平等に遺産を分割する必要があります。
なお、上記に該当する方がいるかどうかは、親の戸籍謄本を取り寄せることで調べることが可能です。
亡くなっている兄弟姉妹に子や孫などがいる場合は代襲相続が発生する
亡くなった親(被相続人)の子がすでに亡くなっており、その子にさらに子や孫(被相続人の孫やひ孫)がいる場合は、本来の相続人の子や孫(被相続人の孫やひ孫)が相続人になります。これを、代襲相続といいます。
たとえば以下の図でいうと、亡くなった母の子のうち、兄がすでに亡くなっているため、兄の子(被相続人の孫)が相続人になるのです。
なお、本来の相続人の子(被相続人の孫)が複数人いる場合には、そのそれぞれが代襲相続人となります。
親の遺産相続で兄弟姉妹間のトラブルになりがちなケース
以下のようなケースにあてはまる場合、兄弟姉妹間のトラブルに発展しやすいため注意が必要です。
- 相続財産の大半を家や土地などが占めるケース
- 親の財産を管理していた兄弟姉妹がいるケース
- 親の介護をしていた兄弟姉妹がいるケース
- 遺言書の内容が不公平なケース
- 生前贈与や多額の支援を受けていた兄弟姉妹がいるケース
- 連絡が取れない・非協力的な兄弟姉妹がいるケース
- 兄弟姉妹の配偶者が遺産分割協議に関与してくるケース
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①相続財産の大半を家や土地などが占めるケース
相続財産に占める不動産の割合が大きいと、土地や建物をどう分けるかでトラブルになる可能性があります。
特に、一部の兄弟姉妹が亡くなった親と実家で同居していた場合には、その兄弟姉妹が「実家不動産をどうしても相続したい」と主張して争いが大きくなるケースもあるため注意が必要です。
不動産は以下のような方法で分割できるため、状況にあわせて適切な分割方法を検討しましょう。
- 不動産を売却して得た金銭を分割する(換価分割)
- 特定の相続人が不動産を取得し、ほかの相続人に代償金を支払う(代償分割)
②親の財産を管理していた兄弟姉妹がいるケース
亡くなった親と同居しており、親の財産を管理していた兄弟姉妹がいる場合、財産の使い込みや隠ぺいを疑われるなどのトラブルに発展するおそれがあります。
トラブルを防ぐためには、財産をどのように使用したか明細をきちんと残しておき、あとからほかの相続人に使途を説明できるようにしておくとよいでしょう。
③親の介護をしていた兄弟姉妹がいるケース
亡くなった親の介護などをしていた兄弟姉妹がいる場合、その兄弟姉妹には「寄与分」が認められ、遺産を多く相続できる可能性があります。しかし、寄与分を認めない相続人がいる場合トラブルに発展するおそれがあるため、注意が必要です。
ほかの相続人に寄与分を認めさせるためには、どれくらい介護に貢献してきたのかを示し、納得してもらう必要があります。そのため、介護日誌などを詳細に付けたり、介護に関する出費の明細をきちんと残しておいたりするとよいでしょう。
④遺言書の内容が不公平なケース
たとえば、「長男に全財産を相続させる」など遺言書の内容が不公平な場合、有効な遺言書であったとしても、ほかの相続人の遺留分(法律上取得することが保障されている最低限の取り分)を侵害していることになります。
そのため、ほかの相続人から遺留分侵害額の請求を受けるなどしてトラブルに発展するおそれがあります。
通常、親が特定の相続人に多くの財産を受け継がせたいと考えたのには何か理由があるはずです。そのため、ほかの兄弟姉妹が不公平感を抱かないためにも、親が生きているうちに、一緒に親の死後のことについてよく話し合っておけるとよいでしょう。
遺留分については、以下のコラムも参考にしてみてください。
⑤生前贈与や多額の支援を受けていた兄弟姉妹がいるケース
親から生前贈与や多額の支援を受けていた兄弟姉妹がいる場合、それを考慮せずに均等に遺産を分けてしまうと、「不公平だ」としてトラブルになるおそれがあるため、注意が必要です。
これは法的に「特別受益」の主張になります。ただし、「いつ・どのような理由で・いくらの贈与を受けたのか」などによって、「特別受益」に該当するかどうかの判断は変わります。そのため、「不公平だ」という主張が必ずしも認められるわけではないことは覚えておきましょう。
⑥連絡が取れない・非協力的な兄弟姉妹がいるケース
兄弟姉妹のなかに連絡がとれない人や、非協力的な人がいる場合、手続が進まずトラブルに発展するおそれがあります。
また、当事者同士でやり取りすると、どうしても感情的になってしまい、なかなかスムーズに話合いが進められないことも多いでしょう。
そのような場合には、弁護士などを介することによって、手続を前に進めやすくなる可能性があります。
⑦兄弟姉妹の配偶者が関与してくるケース
相続人ではないにもかかわらず、兄弟姉妹の配偶者が話合いに口を出してくると、話がこじれて無用なトラブルに発展するおそれがあります。
「話合いに参加するのは相続人本人だけ」というように、先にルールを決めておくと、話合いがスムーズに進められる可能性があります。
親の遺産相続で兄弟姉妹間のトラブルを防ぐ方法
相続トラブルをきっかけに、兄弟姉妹間の関係が悪くなってしまわないためにも、正しい知識をもとにした生前の相続対策や適切な手続をすることが大切です。
以下で、兄弟姉妹間の相続トラブルを防ぐ具体的な方法を見ていきましょう。
遺言書を作成しておく
遺言書があれば、原則として遺言書の内容どおりに遺産を分割することになります。そのため、相続の手続がスムーズに進められ、兄弟姉妹間のトラブルも防ぐことができるでしょう。
ただし、先にご説明したように、遺言書の内容が不公平な場合などには、不満のある相続人が遺留分侵害額の請求をしてくることもあるため、注意が必要です。
生命保険を活用する
生命保険であれば、受取人を指定することが可能です。そのため、相続させたい家族や友人などを受取人にすれば、実質的に財産を受け継がせることができます。
遺産分割の話合いを経ずに財産を相続させる手段として、有効といえるでしょう。
弁護士に相談する
兄弟姉妹間の相続トラブルを避け、スムーズに手続を進めたいのであれば早めに弁護士に相談したほうがよいでしょう。
弁護士に相談すれば、法的知見に基づいたアドバイスをしてもらえます。そのため、まだ兄弟姉妹間で揉めていない場合にも、適切な手続の進め方を知ることができるはずです。
また弁護士は、相続人の調査や相続財産の調査、遺産分割協議書の作成をはじめとする相続の手続を代わりに行うこともできます。
「相続人同士で手続を進められるか不安」という場合も、弁護士に任せられるため安心です。
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兄弟姉妹の遺産相続でお困りならアディーレへご相談を
親の遺産を子が相続する際、兄弟姉妹がいる場合には、基本的に養子や異父・異母兄弟姉妹を含めた全員で、法定相続分を平等に分割する必要があります。
ただし、具体的な状況によっては不公平が生じたり、手続がスムーズに進まなかったりして、トラブルに発展してしまうおそれもあるため注意が必要です。
仲のいい兄弟姉妹であっても、親の遺産相続をめぐるトラブルをきっかけに関係が悪化してしまうケースもあります。
そうならないためにも、生前の遺言書作成や適切な対応が必要です。そして、ご自身で対応するのが難しい場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
アディーレ法律事務所なら、遺言・遺産相続に関するご相談は何度でも無料です。「親の遺産相続の際に、兄弟姉妹間でもめたくない」とお考えであれば、まずは一度ご相談ください。
- この記事の監修者
-
- 弁護士
- 橋 優介
- 資格:
- 弁護士、2級FP技能士
- 所属:
- 東京弁護士会
- 出身大学:
- 東京大学法学部
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