遺言・遺産相続の弁護士コラム

遺産分割調停とは?流れや期間、有利に進めるポイントは?

遺産分割

遺産分割調停とは、裁判官や調停委員が相続人それぞれの主張を聞き取りながら、遺産分割の話合いを取りまとめる手続のことです。

遺産分割調停は、話合いに中立的な立場の調停委員が入ることで、冷静に話し合えるようになるなど、遺産分割で困っている方にとってメリットの多い制度です。
しかし、遺産分割調停の詳細まで把握している方は少ないのではないでしょうか。

そこで本記事では、遺産分割調停の流れや期間、費用などをはじめ、調停を有利に進めるポイントなどについて解説いたします。

この記事でわかること
  1. 遺産分割調停の流れや期間
  2. 遺産分割調停を有利に進めるポイント
  3. 遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット

遺産分割調停とは?

遺産分割調停とは、遺産の分割に関して相続人の間で円滑な話合いができず、解決が難しい状況に陥ったとき、 裁判官や調停委員を通して話合いを行う手続です。

相続が発生したとき、遺言がなかったり遺言の内容が不明確だったりすると、遺産の分割に関する争いが起こりやすくなります。
こういった場合に遺産分割調停を利用することで、裁判所の調停委員が中立的立場で相続人それぞれの主張を聞き取り、遺産分割案を提示するなどして、全員が納得できるように尽力してくれます。

遺産分割調停の費用

遺産分割調停の費用は、およそ1万円前後になるのが一般的ですが、場合によっては金額が大きくなることもあります。
費用の内訳としては、以下のとおりです。

費目金額
調停申立費用1,200円
郵便切手代数千円
添付書類の収集費用数千円~数万円
裁判所までの交通費実費

郵便切手代は、裁判所が郵便物を送付するために使用する切手代のことで、裁判所ごとに金額は異なっています。
また、申立時に添付する書類として、戸籍謄本や登記事項証明書、預貯金残高証明書などを準備する必要もあり、相 続人の人数や遺産の種類が増えれば、手数料がかさむことになります。

なお、上記は遺産分割調停を申し立てる際に必要となる費用です。
弁護士などの専門家に依頼する場合は、もちろん別に費用がかかってくるため、その点も考慮しておく必要があります。

遺産分割調停の期間

遺産分割調停の期間は、少なくとも数ヵ月から1年程度になることが多いです。複雑なケースではさらに長期化する可能性もあります。
遺産分割調停では、月に1回程度のペースで調停(話合い)が行われ、調停をおよそ4~6回ほど繰り返すことが一般的です。

しかし、相続人それぞれの主張がまとまらず、調停を何度も重ねることになれば、期間が1年以上にわたることもあります。そのため、遺産分割調停を利用する際には、十分な時間や手間を見込んで進めることが重要です。

遺産分割調停のメリットとデメリット

遺産分割調停のメリットとして、まず挙げられるのが、裁判所の調停委員による中立的な調停が行われることです。これにより、相続人同士の感情的な対立が和らげられ、冷静に話し合うことができますし、相続人それぞれが納得のいく解決につながりやすくなります。
また、遺産分割調停が成立すれば、それに基づく遺産分割が法的に確定するため、のちにトラブルに発展するような事態も防げるでしょう。

一方、デメリットとしては、遺産分割調停には手間や時間がかかることが挙げられます。
また、遺産分割調停の申立てには所定の手数料がかかりますし、弁護士などの専門家へ依頼する場合には、その費用も用意しなければなりません。

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停は、基本的に以下のような流れで進んでいきます。

以下では、ポイントとなる項目について詳しく解説していきます。

管轄の裁判所への申立て

遺産分割調停を始めるには、管轄の裁判所に申立てを行う必要があります。
申立ての際には、調停申立書を作成し、戸籍謄本や不動産登記簿等の証明書類を添付して提出しなければなりません。

調停の実施

調停が開始されると、相続人全員が裁判所から呼び出され、調停委員を介して遺産分割に関する話合いを進めます。調停では、相続人それぞれの主張や要望を確認し、調停委員が遺産分割の案を提示します。

調停は、およそ4~6回ほど繰り返すことが一般的です。そして、相続人全員の合意が取れれば、調停成立となります。

調停が成立した場合

調停が成立すると、遺産分割調停調書が作成され、相続人全員に交付されます。調書には、遺産の分割方法な ど、具体的な遺産分割の詳細が記載されています。

遺産分割調停が確定したあと、その内容に基づき遺産分割が実施されます。その際、不動産の相続登記手続や財産の名義変更手続が必要となります。

調停が不成立となった場合

調停が不成立となった場合、「遺産分割審判」に進むことになります。
調停が不成立となる理由は、相続人の間で話合いや 協議が進まず、遺産分割に関する合意が全員で成立しないことが主な要因です。こうした状況を解決するべく、裁判所による審判手続に移行します。

審判手続は、相続人それぞれが遺産分割について主張をし、裁判所がそれを検討し判断を下すものです。調停(話合い)とは異なり、多くの人がイメージする「裁判」に近いといえます。
審判では、相続人は証拠や資料を用意し、相手方の主張に対応しなければなりませんが、一般の方はそうした裁判対応に通常慣れていません。
そのため、ほとんどの方が弁護士に依頼をして審判に臨みます。

遺産分割調停に関する疑問

遺産分割調停は、多くの方にとってなじみのない手続です。そのため、さまざまな疑問が出てくることでしょう。
ここでは、よくある疑問として以下の2点について解説します。

裁判所からの呼び出しを無視したらどうなる?

裁判所からの呼び出しを無視した場合、欠席について正当な理由がないと裁判所が判断すれば、5万円以下の過料が科される可能性があります。

また、欠席を繰り返すことで、裁判所が調停の継続が難しいと判断した場合には、調停は不成立となり、自動的に審判手続に移行することになります。
さらに審判でも欠席を続けてしまうと、自分の言い分をまったく聞いてもらえないまま手続が進められることになるため、相手方に有利な内容で審判が下される可能性があります。

遺産分割調停は弁護士なしでもできる?

遺産分割調停は、弁護士がいなくても、相続人同士で調停委員と話合いを進めることは可能です。

ただし、法的知識や手続に関する正確な理解を必要とされる場面も多いため、弁護士に依頼することが一般的といえます。本記事内では、遺産分割調停を弁護士に依頼するメリットについて も解説していますので、併せてご覧ください。

ほかにも、遺産分割によって発生する税金のことも考慮に入れる必要がありますが、相続税の申告や節税対策に関しては、税理士に相談するべきでしょう。

遺産分割調停を有利に進めるポイント

遺産分割調停は、相続人の間でのトラブルや対立を解決するにあたり、有効な方法の一つです。しかし、調停を有利に進めるためには、いくつかのポイントに注意しなければなりません。
以下では、遺産分割調停を有利に進める4つのポイントを解説します。

自分の主張を整理しておく

遺産分割調停では、ほかの相続人も納得ができるように、自分の主張を冷静に伝える必要があります。
そのため、「自分がどんな財産を受け取りたいのか」、「財産を受け取る根拠は何か」などを、明確に説明できるように整理しておきましょう。感情に任せて話すだけでは、相手方にも調停委員にも納得してもらうことはできません。

また、相手方となる相続人の主張を想定し、その点も含めて整理しておくことができれば、調停をより優位に進めやすくなるでしょう。

客観的な裏付けができる資料を用意する

遺産分割調停を有利に進めるためには、自分の主張を裏付ける客観的な資料が重要です。
たとえば、相続財産の価値を示す不動産鑑定書や預貯金残高証明書、過去の贈与を証明する書類など、自分の主張を立証できる資料を用意しておくことが有利に働きます。
また、ほかの相続人とのやり取りを証明するために、過去のメールや書面でのやり取りも保管しておくとよいでしょう。

自分の要望ばかりを押し付けない

遺産分割調停を有利に進めるためには、自分の要望だけを押し付けず、ほかの相続人の意見に耳を傾けることも大切です。
相手方の意見や要望を理解し、譲歩できる部分は譲歩すれば、調停がスムーズに進みますし、相手方も別の部分で譲歩してくれる可能性があります。

また、調停委員や相手方の意見を取り入れることで、よりよい遺産分割案が生まれることもあるでしょう。いずれにせよ、自分の主張にばかり固執せず、調停委員や相手方とのコミュニケーションをおろそかにしないことが重要です。

必要な法律知識を身につけておく

遺産分割調停では、遺産相続に関する法律知識があれば、調停を有利に進められる可能性が高まります。
法律に則って自分の主張を伝えることができれば、調停委員に納得してもらいやすくなるからです。
たとえば、法定相続分や遺留分、遺産の評価方法などを把握しておくと、感情に任せた主張ではなく、より説得力のある主張ができるようになるでしょう。

また、相手方の主張が法的な根拠をもとにしているのか、それとも単に要望を押し付けているだけなのか、といった点にも着目できるようになるかもしれません。
もちろん、一般の方がそこまで正確に法律を理解できるようになるのは難しいため、事前に弁護士からアドバイスをもらうことも検討すべきです。

遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット

遺産分割調停は、相続人だけで行うこともできますが、豊富な法律知識と交渉の経験を持つ弁護士にサポートしてもらえば、より円滑に調停を進めることができます。
以下では、遺産分割調停を弁護士に依頼するメリットを3つご紹介いたします。

法律知識をもとに主張を代弁してもらえる

遺産分割調停では、弁護士を立てることで、法律知識をもとに自分の主張を代弁してくれます。たとえば、遺産の評価方法や特別受益、寄与分など、一般の方には難しい観点から主張を行い、自分の要望が叶うように尽力してもらえます。

ほかに、相手方の主張に対して法的根拠に基づいた反論をしてくれますし、相手方の提案に対する適切なアドバイスなども受けられます。

面倒な申立手続から任せられる

遺産分割調停を行うには、事前に申立手続が必要になりますが、さまざまな資料を準備して裁判所に提出しなければなりません。
用意する資料は、申立書や遺産目録、相続人関係図、戸籍謄本、遺産内容を示す資料などですが、一般の方が準備するとそれだけ手間と時間がかかります。

しかし、弁護士に依頼すれば、代わりに申立手続を行ってもらうことができます。負担が大きく軽減されるだけでなく、資料の収集漏れなどを心配する必要もなくなります。

自分の代わりに出席してもらえる

弁護士に依頼をすれば、自分の代理人として遺産分割調停に出席してもらうこともできます。
たとえば、調停当日にどうしても都合がつかない場合や、調停が行われるのが遠方の裁判所で出向くのが難しい場合などでも、自分が直接出席しなくても、弁護士が代理人として出席し、適切に手続を進めてくれるのです。

ただし、調停が成立するタイミングなどでは、たとえ弁護士に依頼をしていても、相続人本人の意思確認のために出席が必要になる場合もあります。

遺産分割調停でお困りならアディーレへ

アディーレは、遺産分割調停に関するご相談が何度でも無料です。遺産分割調停に関するご依頼も、積極的に承っております。
遺産分割調停に関する疑問やご不安がある方は、ぜひお気軽にお問合せください。

また、アディーレ独自の「損はさせない保証」により、ご依頼いただいたにもかかわらず成果を得られなかった場合、原則としてお客さまの経済的利益を超える費用をお支払いいただくことはありません(※)。

遺産分割調停でお困りの方は、ぜひ一度アディーレへご相談ください。

  • 委任契約の中途に自己都合にてご依頼を取りやめる場合、成果がない場合にも解除までの費用として、事案の進行状況に応じた弁護士費用等をお支払いただきます。
橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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