遺言・遺産相続の弁護士コラム

相続放棄できないことはある?できなかったときの対処法と手続のポイント

相続放棄・限定承認

相続放棄は、適切な手続をすれば多くの場合認められます。
ただし、手続の期限を過ぎてしまった場合など、相続放棄が認められないケースもあるため注意が必要です。

そこでこのコラムでは、相続放棄できないケースやその理由に加え、手続で失敗しないためのポイント、相続放棄できなかった場合の対処法などを解説します。
「相続放棄したいけど、できないことはあるの?」と不安に思っている方や、多額の借金などマイナスの財産が多く、相続放棄を検討されている方はぜひ参考にしてください。

この記事でわかること
  1. 相続放棄ができない具体的なケース
  2. 相続放棄を失敗しないためのポイント
  3. 相続放棄できなかった場合の対処法

基本的に相続放棄の申立ては受理されやすい

裁判所は、却下すべきことが明らかでない限り、相続放棄の申述を受理すべきであるとしています(東京高等裁判所平成22年8月10日判決)。
そのため、基本的に相続放棄は受理されやすい手続であるといえるでしょう。

相続放棄は、相続人であれば誰でも行えます。相続人全員が相続放棄することも可能です。
また、相続放棄できるのは、マイナスの財産がある場合に限りません。プラスの財産だけである場合にも、相続放棄することができます。

ただし、以下の点に注意が必要です。

一部の財産のみを相続放棄することはできない

相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったとみなされます(民法第939条)。
そのため、一部の財産だけを相続し、それ以外を相続放棄することはできません。

相続放棄する場合は、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も含めた一切を相続しないことになるため注意しましょう。

詳しくは、以下のコラムも参考にしてみてください。

相続放棄ができない財産もある

相続財産に含まれない財産に、「祭祀財産(さいしざいさん)」があります。祭祀財産とは、墓石や仏壇など、先祖を祀るための財産のことです。これらは民法の規定で祭祀主宰者が承継するものとされています。そのため、相続放棄をしても、祭祀財産の承継を免れることはできません。

また、相続財産に含まれる財産であっても、相続放棄後に財産の保存義務が残る場合もあります。
これは、民法上、「相続放棄をする者が相続財産を現に占有しているときは、ほかの相続人などにその財産を引き渡すまでの間、その財産を自己の財産と同様に保存しなければならない」とされているためです。

たとえば、亡くなった方の所有する実家にあなたが住んでいる場合は、相続財産である実家不動産をあなたが現に占有していたとされます。つまり、相続放棄をしても実家不動産の保存(管理)をしなければならない可能性があるのです。

相続放棄できないケースとは

このように相続放棄は、そもそも一部の財産だけを相続放棄できなかったり、相続放棄できない財産があったりするものの、基本的には受理されやすい手続です。
ただし、以下のケースでは相続放棄ができないおそれがあります。

手続の期限を過ぎてしまった ケース

相続放棄の手続は、原則として相続の開始を知った日 から3ヵ月以内に行わなければなりません。
あなたの親などが亡くなって相続が発生しているのに放置していると、手続期限を過ぎてしまい相続放棄ができなくなるおそがあるため注意が必要です。

なお、「相続の開始日」とは、被相続人の死亡した日とされています。
詳しくは以下のコラムでも解説していますので、参考にしてみてください。

知らないうちに相続してしまった ケース

相続財産を処分するなどしてしまうと、相続(単純承認)したものとみなされて、相続放棄ができなくなってしまうおそれがあります。

単純承認にあたる可能性があるのは、たとえば相続財産に対する以下のような行為です。

  • 預貯金をおろして自分の生活費に充てる
  • 不動産の名義変更をする
  • 自動車を売却する
  • 遺産分割協議をする
  • 株主としての権利を行使する
  • 賃貸物件の賃料振込先を自分名義の口座に変更する

相続放棄をしたい場合には、このような行為をしないよう注意しましょう。

書類や手続に不備があったケース

相続放棄をするには、相続放棄申述書や戸籍謄本などの提出が必要です。これらの必要書類に不備があると相続放棄が認められないおそれがあるため注意しましょう。

また、家庭裁判所の判断により、照会書の回答を求められるケースがあります。
照会書は、相続放棄の申述があなたの真意によるものかなどを確認するためのものです。そのため、照会書に回答しないと手続が進められず、相続放棄が認められないおそれがあります。
照会書の回答を求められたときには、早めに回答し返送しましょう。

相続放棄を失敗しないためのポイント

相続放棄の手続を確実に進めるためには、以下の3つのポイントがあります。

  1. 早めに財産の調査をする
  2. 亡くなった方の財産には手をつけない
  3. 弁護士に相談する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

早めに財産の調査をする

相続放棄は、原則として3ヵ月以内に手続しなければなりません。そのため、どんな財産があるのかを早めに調査しておいたほうがよいでしょう。特に、隠れた債務の存在には要注意です。

相続が発生する前に、将来あなたが相続人となる可能性のある親族の方としっかり話し合っておき、財産の情報を把握しておくのが理想的といえます。

亡くなった方の財産には手をつけない

相続放棄するかどうかを決めるまでは、「知らないうちに相続してしまったケース」でもお伝えしているとおり、亡くなった方の財産に手をつけないようにしましょう。
これは、財産を処分するなどの行為(単純承認)をしてしまうと相続放棄ができなくなってしまうリスクがあるためです。

財産を使う・処分するといった行為以外にも、名義変更や亡くなった方宛ての請求書の支払いなども単純承認にあたる可能性があるため、注意しましょう。

弁護士に相談する

相続や相続放棄について、「自分で対応するのは難しい」、「自分でできるか不安」ということであれば、早めに弁護士に相談しましょう。

弁護士に依頼すれば、財産が多すぎて調査が大変な場合や、手続の期限まで時間がない場合も任せられるので安心です。

自己判断で手続を進めてしまうと、「あとになって債務があることに気付いたものの、すでに相続の手続をしてしまい相続放棄ができない」という事態にもなりかねません。そのような事態を回避するためにも、相続が発生したらすぐに弁護士への相談を検討するのがおすすめです。

相続放棄できなかった場合の対処法

相続放棄が認められなかった場合、2週間以内に「即時抗告」を行うことで不服の申立てが可能です。たとえば、3ヵ月以内に相続放棄を行わなかったことなどについて特別な事情があれば、相続放棄が認められる可能性があります。

ただし、即時抗告の際は、相続放棄が受理されるべきことを法的根拠に基づいて説得的に主張する必要があります。そのため、一般の方がご自身で即時抗告の手続を行うことは、現実的ではありません。
相続放棄が認められなかった場合には、弁護士へ相談することを検討すべきでしょう。

相続放棄に関するよくある質問

相続放棄について、お客さまからよく寄せられるご質問にお答えします。

親の借金は相続放棄できない ?

親の借金を相続放棄することは可能です。
ただし、あなたが相続放棄したことで、ほかの相続人が借金の返済を求められ、トラブルになる可能性もあります。そのため、ほかの相続人の方とは事前によく話し合っておきましょう。

連帯保証人は相続放棄できない ?

亡くなった方が第三者の借金の連帯保証人だった場合、連帯保証債務についても相続放棄することが可能です。

一方、あなたが亡くなった方の連帯保証人だった場合は、相続放棄をしても債務を免れることはできません。つまり、亡くなった方の借金を肩代わりする必要があるということです。
これは、連帯保証債務が相続によって引き継いだものではなく、あなたが元から負っていた債務であるためです。

相続放棄をより確実に進めるならアディーレにご相談を

相続放棄は、手続期限を過ぎてしまったり、財産を処分するなどの行為をしてしまったりすると、認められなくなってしまうことがあります。
そのため、きちんと財産を把握し、適切に手続を進めることが大切です。

しかし、ご自身では財産を調査するのが難しい場合や、期限内に必要書類を集めて手続するのが難しい場合もあるでしょう。
そのため、弁護士に依頼し手続を任せるのがおすすめです。弁護士なら、法律知識やノウハウを駆使して適切に判断し、スムーズに手続を進められます。

アディーレでは、相続放棄に関するご相談が何度でも無料です。
手続をお任せいただけるのはもちろん、相続に詳しい弁護士があなたのご状況に合わせて最適な解決方法をご提案いたします。
「相続放棄で失敗したくない」とお考えであれば、より確実に手続を進めるためにも、まずは一度ご相談ください。

橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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