遺言・遺産相続の弁護士コラム

誰も相続しない土地はどうなる?相続放棄や国へ帰属させる方法を解説

相続放棄・限定承認

「親の遺産には土地もあったが、兄弟のうち誰もこの土地を相続したがらない。資産価値もなく、売れそうにないけれど、どうにかしてこの土地を処分できないだろうか?」
地方の過疎化などの影響により、誰も相続したがらない土地の処分に困っている方は少なくありません。

誰も相続したがらない土地は、売却処分だけでなく、自治体に寄附したり、国に引き取ってもらったりできる場合があります。

誰も相続したがらない土地をきちんと処分し、相続にかかる負担をなるべく少なくするために、こちらの記事を役立ててください。

この記事でわかること
  1. 相続した土地を処分する方法
  2. 相続放棄する場合の注意点
  3. 誰も相続しない土地はどうなるのか

誰も相続しない土地が発生するのはなぜ?

誰も相続しない土地が発生する理由としては、次の2つが考えられます。

  • そもそも相続人がいない(子どもがおらず、配偶者や親兄弟がすでに亡くなっているなど)
  • 相続人全員が相続放棄した

また、相続人が共同相続したけれども、その後の遺産分割協議で誰も欲しがらないため、処分に困る土地が発生するケースも考えられます。

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いらない土地だけを相続放棄することはできないのですか?

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残念ながらできません。
相続放棄とは、一切の相続財産の相続を拒否して相続人でなくなることです。
相続人ではなくなるため、借金などのマイナスの財産を相続しないで済む代わりに、現金や預貯金、不動産などプラスの財産もすべて相続できないことになります。

【相続放棄のイメージ】

誰も相続したがらない土地を処分する方法

では、相続はするけれども、相続財産のなかに誰も欲しがらない土地が含まれている場合、そのような土地を手放すには、どのような方法があるのでしょうか。

売却する

(たとえば、「この土地は誰々に相続させる」などといった旨の)遺言がなく、特にその土地を相続したい相続人がいないのであれば、相続人全員の合意で売却し、売却代金を法定相続分通りに分配するという分割協議を行うのがもっとも一般的な方法と考えられます。
なるべく高く売却したいところですので、査定は複数の業者から取るようにするとよいでしょう。

なお、譲渡所得にかかる税金についてですが、売却した土地や家屋が、被相続人(亡くなった人)の居住用財産であった場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除することができます。

参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

自治体へ寄附する

自治体によっては、土地の寄附を受け付けてもらえる場合があります。
また、建物がある土地は受け付けていないなど、自治体によって寄附を受け付ける基準や必要書類は異なります。
少なくとも、寄附したい土地の登記事項証明書や遺産分割協議書など、現在の土地の所有者がわかる書類を提出する必要があるでしょう。

参考:土地の寄附について|新潟市

国に引き取ってもらう

新たに制定された相続土地国庫帰属法という法律(2023年4月27日施行)によって、相続した土地を国が引き取ってくれる制度(相続土地国庫帰属制度)がスタートします。

申請先帰属させる土地を管轄する法務局・地方法務局
申請できる人相続または相続人に対する遺贈(相続等)によって土地を取得した人

※相続等により、土地の共有持分を取得した共有者は、共有者の全員が共同して申請を行うことによって、本制度を利用することができます。また、共有者の全員が相続等によって土地の共有持分を取得していなくても、本制度の利用は可能です。
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この制度が開始されたあとに相続した土地でなければ、引き取ってもらえないのですか?

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いいえ。いつ相続した土地でも問題ありません!
極端な話、何十年前に相続した土地であっても、相続土地国庫帰属制度の対象となります。

ただし、次のような土地は、申請できないとされています。

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地
  • 所有権の存否や範囲について争いがある土地

また、次のような土地は、申請しても承認を受けることができないとされています。

  • 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  • 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  • その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地

本制度を利用するメリットとデメリットは、次のとおりです。

メリット・売却できないような土地でも、手放すことができる
・土地の管理責任や固定資産税の支払いから解放される
・(自分の死後)子に土地の管理責任などを引き継がせず、自分の代で終わりにできる
デメリット・費用が掛かる
審査手数料および負担金
(負担金の額は、種目(宅地や農地、森林など)ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額とされています)

参考:相続土地国庫帰属制度の概要|法務省

相続放棄を選択した場合の注意点

被相続人の遺産は、財産より借金の方が多い場合や、遺産は売れないような価値のない土地ばかり、といった場合は、相続放棄することを検討するとよいでしょう。
ただし、先述のとおり、相続放棄すると、借金や価値のない土地だけでなく、預貯金や価値のある土地も相続できなくなるためご注意ください。

相続放棄は3ヵ月以内

相続放棄には期限があり、原則として、自分が相続人であることを知ってから3ヵ月以内とされています。
相続は被相続人の死亡によって開始するため、自分が被相続人の子どもであり、生前から密接な関係にあったのであれば、被相続人が亡くなってから3ヵ月以内となる場合が多いでしょう。

いつを起点に3ヵ月以内とするかについて詳しくはこちらをご覧ください。

相続放棄すると次順位の相続人が相続する

たとえば、相続人が被相続人の子どもだけの場合で考えてみましょう。被相続人の配偶者と、被相続人の直系尊属(被相続人の両親など)はすでに死亡しているとします。
子ども(複数いればその全員)が相続放棄した場合、被相続人の兄弟姉妹が存命であれば、その人(たち)が相続人になります。(この場合、被相続人の兄弟姉妹が、次順位の相続人ということになります)

相続放棄により、本来は相続人でなかったはずの人が相続人となる場合、その人には相続放棄をすることを伝えておくとよいです。
法律上、次順位の相続人の許可がなくとも、相続放棄をすることは可能です(家庭裁判所において、相続放棄の手続をすることは必要です)。
しかし、次順位の相続人にとっては予想外の相続が生じることになりますから、従前の関係性によってはトラブルの元になりかねません。
そのため、次順位の相続人の連絡先がわかるのであれば、その人が相続した土地などの財産を管理したり、その人も相続放棄するかを検討したりできるように、相続放棄をする意向であること(相続放棄したあとであれば、その旨)を伝えておくことが望ましいでしょう。

次順位の相続人が相続放棄すれば、さらに次順位の相続人が相続するケースもありますが、相続人は最大でも第3順位(被相続人の兄弟姉妹およびその代襲者)までしかいません。

※代襲とは、被相続人の死亡前に相続人がすでに亡くなっているなどして、その相続人の子どもが相続することをいいます。

相続放棄について詳しくはこちらをご覧ください。

誰も相続しない土地について、よくあるQ&A

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私が相続放棄した後、土地は放置してよいのでしょうか?

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2023年4月1日に施行された改正民法によって、以前はあいまいだった保存義務の範囲が明確になりました。
2023年4月1日以降に相続放棄をした人の相続財産の管理義務は、次のとおりです(民法940条1項)。

・相続放棄をしたときに、現に占有している相続財産について
・相続人(相続人全員が相続放棄をした場合には、相続財産の清算人)に対してその財産を引き渡すまでの間
・自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならない

「相続放棄時に現に占有している」とは、たとえば、被相続人の生前、被相続人の所有する不動産に一緒に住んでいた場合などです。
遠方に住んでおり、被相続人の財産とは関わりなく生活していた場合などであれば、基本的に相続財産の管理義務を負うことはないでしょう。

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第3順位の相続人まで全員相続放棄したら、誰も相続しない土地はどうなるのですか?

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最終的には、国のものになります(民法959条前段)。
ただし、何もしなくても、国が取得するための手続をしてくれるわけではありません。
利害関係人(主に相続放棄をしてもなお管理責任を負う人)などが家庭裁判所に「相続財産の清算人」(同952条1項)の選任を請求し、選任された相続財産の清算人がその土地の管理を引き継ぐことになります。

【まとめ】誰も相続したがらない土地は、国に引き取ってもらえる場合がある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 誰も相続したがらない土地の処分方法(相続した場合)は、次の3つ
    ①売却する
    ②自治体へ寄附する
    ③国に引き取ってもらう
  • 相続放棄すると、借金や価値のない土地だけでなく、預貯金や価値のある土地も相続できなくなる
  • 相続放棄は、原則として、自分が相続人であることを知ってから3ヵ月以内にしなければならない
  • 相続放棄により、本来は相続人でなかったはずの人が相続人になることがある
  • 遠方に住んでおり、被相続人の財産とは関わりなく生活していた場合などであれば、基本的に相続財産の管理義務を負うことはない
  • 相続人が全員相続放棄するなどで、誰も相続しないことになった土地は、最終的には国のものになるが、国に取得してもらうための手続が必要

兄弟姉妹が共同で土地を相続したまま放置しており、のちにその子どもたちがまた共同相続した結果、共有者の数が膨れ上がり、当事者たちですらその土地の共有者が誰なのか把握できなくなってしまうことがあります。
そのようなことになる前に、きちんと相続手続をしたいとお考えの場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

アディーレ法律事務所は、相続放棄など遺産相続にまつわる問題について積極的にご相談・ご依頼を承っております。
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相続に関する相談料は何度でも無料です。遺産相続でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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